1: ばーど ★ 2020/09/14(月) 11:02:20.00 ID:+Bm424N79
兵庫県姫路市内に相続人が93人にも上る「特定空き家」がある。終戦直後に適切な手続きがとられず、枝分かれした子孫が自覚のないまま権利を分け合った結果、所有権は“原点”となる男性の5世代先、来孫(らいそん)(ひ孫の孫)にまで広がった。市はこれまでに、関係者の家系図作りや所在確認などで100万円以上を投入。周辺にも影響を及ぼすことから撤去を視野に調整を進めるが、解決の糸口は見いだせていない。(小川 晶)
姫路市的形町の木造平屋で、築造や空き家になった時期は分かっていない。建物の一部は既につぶれ、雑草に覆われている。
市がこの空き家を把握したのは2008年。近隣から「草木が茂って迷惑」と訴えがあり、所有権をさかのぼって調べてみたところ、昭和初期に亡くなった男性にたどり着いた。
当時の民法には「家督相続」の規定があり、遺産は一般的に長男のみが相続するとされた。このため、問題の建物も男性の長男が単独で相続したとみられるが、その死去が岐路となった。
亡くなったのは1950年ごろ。長男の子も既に亡くなっていたが、47年の民法改正で相続対象が拡大されており、所有権は長男のきょうだい7人に移った。市の担当者は「きょうだいが規定を知らず、そのまま放置されたのかも」と推測する。
その7人も08年時点で全員が死亡しており、所有権はさらに枝分かれ。市はひとまず7人の子世代約30人に聞き取りをしたが、誰にも相続の認識はなく、空き家に行ったことがある程度だった。
2018年9月、建物の一部が風雨で倒壊した。市は空き家対策特別措置法に基づく特定空き家に認定し、フェンスで囲うなど応急対策を実施。数十万円の費用の請求先を確定させるため、男性を基点とする家系図を作った。
その結果、相続権は来孫まで約200人に及び、93人が存命と分かった。図面作成と所在確認には100万円ほどかかったという。
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市は20年6月までに、全員に相続権が発生している事実を通知したが、互いに面識がない親族も多く、費用負担や撤去に向けた調整は進んでいない。特定空き家は、指導、勧告などを経て行政代執行で除去できるが、担当者は「建物は所有者が処分するのが大原則。段階的かつ慎重に判断せざるを得ない」と話す。
空き家の相続人を巡っては、千人単位とされる京都市の建物が19年に報じられたが、元々約200人が共同で所有していたという特殊事情があった。姫路市はこれまでに計16棟の特定空き家を認定したが、他の物件の相続人は最大でも20人程度。兵庫県内の自治体に相続人が最も多い特定空き家などを確認したところ、神戸市が約50人、尼崎、明石市は10~20人程度だった。
■国は相続時の登記義務化で調整
相続人が100人規模に膨れ上がった特定空き家について、姫路市は相続時に建物の登記が行われていなかった影響も大きいとみる。同様の理由で所有者が分からない土地や建物は全国的に増加傾向にあり、国は相続時の登記を義務化する方向で調整している。
市によると、問題の空き家は土地の登記も昭和初期に亡くなった男性で途絶えていた。担当者は「登記の手続きがなければ所有権が移った裏付けが取れず、結果的に多くの親族を巻き込むことになる」と話す。
不動産登記法では、登記は「所有者の権利」として定められ、「義務」ではない。法務省は「個人の財産に関わる事項であるため」と説明。新規購入の場合は、前の所有者による転売などを防ぐため必ず登記するが、相続では目立った不利益が発生しないため、手続きされないケースもあるという。
所有者が分からない不動産の増加を受け、国は法制審議会で登記の在り方などの議論を進める。同省によると、相続登記の義務化についてはパブリックコメントでも賛成が多数を占めており、本年度中に法案をまとめる方針という。(小川 晶)
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2020/9/13 10:20 神戸新聞NEXT
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