[東京 23日 ロイター] – 2月ロイター企業調査によると、日銀による追加緩和がこれ以上必要ないとみている企業は7割を占めた。
1%─2%未満の物価上昇を望む声が最も多く、全体の8割は2%未満が望ましいとしている。
また、原油価格の下落メリットが円安コストと相殺され、収益増に結びつかないとみている企業が大半であることも明らかとなった。
内需は停滞しており今年は昨年から横ばい、ないし縮小との見通しが5割を超えた。
この調査はロイター短観と同じ期間・対象企業で実施。2月2日─17日に400社を対象に行い、うち回答社数270社程度。
<原油安メリットは円安コストで打ち消し>
原油価格の大幅下落は日本企業にとってプラス効果が大きいと期待されるが、収益押し上げを見通す企業はさほど多くないことが明らかとなった。
原油価格下落が経営に及ぼす影響について、68%の企業が「あまりない」と回答。原油安メリットが大きいとみられる素材業種では増益効果が半数を超えたが、それ以外の業種ではほとんど影響を見込んでいない。
「大幅な増益」につながるとしたのは1%、「ある程度の増益」との回答は25%だった。「大幅減益」「ある程度減益」は合計で5%。
増益効果が見込めない背景には、円安によるコスト上昇が原油安メリットを相殺するとの見方がある。
さらに原油安の間接的な影響は、まだ不透明な面もある。「製造原価が下がり設備投資予算の確保が容易になれば、追い風だが、取り組みを積極化してきた再生可能エネルギー事業には多少ネガティブ」(電機)、「エネルギー費用低下で需要喚起につながればプラスだが、新興産油国の経済低迷が世界経済全体に悪影響を及ぼすとマイナス」(輸送用機器)など、プラス・マイナスどちらに転ぶのか、不安を抱えている模様だ。
<これ以上の追加緩和必要なし、物価2%未満が望ましく>
原油安の影響もあり日銀の掲げる2%の物価目標達成が難しくなっている中で、これ以上の追加緩和について、回答企業の72%が「必要性を感じない」と答えた。
「必要だと感じる」との回答は28%で、日銀が公約しているからという理由が目立ち、「目的達成」のためと認識されている。
必要性を否定する回答には、実体経済への具体的な効果はなく、むしろ弊害を指摘する声がほとんど。
「景気改善に効果が見込めない」(機械)「日銀と金融機関の間での資金移動という印象で、実需に結び付いていない」(化学)などの意見が目立つ。
弊害としては「財政健全化に向けアブノーマルな状態を続けるのはリスク要因を増やすだけ」(ゴム)、「将来的な日本国債の信頼性が懸念される」(機械)など、財政への不安のほか、「円安進行で仕入価格が上昇し利益が圧迫されてしまう」(小売)、「賃金上昇が追い付かない」(電機)
「原油価格下落に伴う消費マインド改善を見極めることが先決」(建設)
「円安恩恵は一部企業に留まっており、格差を助長」(小売)など、様々な角度から多くの指摘が寄せられた。
企業活動望ましい物価上昇率を尋ねたところ「1%超2%未満」の回答が全体の38%を占め、最も多かった。
「1%程度」の28%、「1%未満」の13%を合わせて、2%未満が望ましいとみている企業が8割程度となった。
「2年で2%」という物価目標を日銀が達成しようとしていることは事業環境にメリットがあるとの回答は22%にとどまった。
「デメリット」と見る企業は12%と少ないが、「どちらとも言えない」が66%と過半数を占める。
長期にわたるデフレの継続により物価が上昇した際の経済の動きが「予測できない」との戸惑いがあることも明らかとなった。
<内需拡大、過半数が今年も見込めず>
消費増税の影響は薄れてきたが、今年も内需拡大が見込めないとみる企業は、「横ばい」が49%、
「縮小」が7%で、あわせて56%に上った。一方、今年は「大幅に拡大する」との回答はゼロ、「やや拡大」は44%だった。