為替水準での安定が何よりと考えており、円安・円高両方向への大幅な振れには為替介入などの対応を望んでいることが明らかとなった。
円高対応力は企業によりまちまちだが、円安方向についての限界は120円までに集中。
110円を超す円安には45%が政府に何等かの介入を求める必要が出てくると回答。
120円超の円安には9割弱の企業が介入を希望している。
この調査はロイター短観と同時に同じ対象企業(資本金10億円以上の企業)に実施。
調査期間は9月30日─10月14日。回答社数は400社ベースで260社程度。
<今後1年間のレンジ、100─110円の予測が6割>
「円安にしろ円高にしろ急激な為替変動は避けてほしい」── 円安の悪影響は業種により異なると言われているが、
実際には輸送用機器や電機、機械など、円安によって円建て輸出収益に
メリットが出る加工型産業でも110円程度のドル円相場からの大きなかい離は望んでいない。
「大きくぶれないことがビジネスの安定につながる」(機械)、「輸入品や電気代の高騰が気がかりになっている」(輸送用機器)、
「あまり円安が進むとマイナス効果もある。政府は相場感を持って対処してほしい」(電機)といった声がほとんど。
加工型業種の合計では、110円超での為替介入を求める声が41%に達し、
120円超まで円安が進行すると、88%の企業が介入を望む結果となった。
円安が輸入コストに響く非製造業でも、それほど大きな違いはない。
110円を超える水準では47%の企業が介入を望み、120円超では89%に増える。
業種にかかわらず、足元の為替相場が安定することが企業には何よりの処方箋となることが明らかで、
政府に対しては円安・円高のメリットを論じるよりも相場変動を回避する対応に期待が集まっている
今後1年間のドル円相場の見通しは、100─110円程度との回答が59%、110─120円程度が35%を占め、
このレンジからはずれないことが企業にとって安定した事業展開の前提になる。
<コスト上昇で3割が利益減少>
円安の影響や人件費上昇など、このところ企業には様々なコスト増が影響を及ぼしている。
今回の調査によれば、最も影響が大きいのが原料・資材調達で、製造業では63%の企業が、
非製造業では43%が悪影響が出ていると回答。その他にも、製造業では生産・販売体制に
17%の企業で悪影響が出ているほか、非製造業では従業員の確保に26%の企業で影響が出ている。
こうしたコスト増を吸収できず、経常利益が減少している企業も全体で31%に上っている。
企業からは「設備投資額が予想以上に膨らみそう。増産に合わせて増員を予定したがうまくいっていない」(機械)、
「労務費、材料・外注費など生産コストが上昇」(輸送用機器)といった声や、「採用難で人材採用・調達コストが増加。
ソフトウエァ開発の売り上げ確保にとって人材難は重大リスク」(通信)など、事業そのものに支障が出始めている様子がうかがえる。
<消費増税へ「経済環境整う」は2割>
現下の経済状況からみて、消費税10%への引き上げが実施可能とみている企業はまだ少ないことも明らかとなった。
増税を実施できる経済環境だと思うとの回答は20%、思わないが33%、まだ判断できないが47%となった
増税判断に際しての考え方として「デフレ脱却を優先すべき」との回答が42%だったのに対し、「財政再建を優先すべき」が39%と、考え方は2つに分かれている。
デフレ脱却派からは「景気浮揚による税収増で財政再建を目指すべき」(建設)、
「増税は早期に判断を下さず、ぎりぎりまで待つようにしてほしい」(輸送用機器)といった声が挙がる。
これに対し、財政再建派からは「財政再建が遅れると国債消化不良による金利上昇時期が早まる」(その他サービス)といった悪影響への懸念がある。
財政再建優先派が4割近いのに対し、増税環境が整ったとの見方が2割すぎないことから、
財政再建派でも必ずしも現下の状況で増税に賛成と判断できていないことがうかがえる。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0I80VJ20141019
ロイター企業調査:「110円超」で介入希望45%、為替安定へ対応期待