http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0HK0FU20140925?rpc=223
[東京 25日 ロイター] – 円安が進む外為市場で、日本の個人投資家の
投資スタンスに変化が出てきた。これまで逆張りが目立った、いわゆる「ミセス・ワタナベ」は、
ドル先高観を背景に直近では押し目買いで存在感を見せるようになっている。
利益確定のドル売りを進める海外ファンド勢との対決構図にも、注目が集まっている。
<想定外の円安テンポ>
1カ月で6円強の円安進展は、多くの個人投資家にとって「想定外」と映っていたようだ。
東京都内在住で、FX(外為証拠金取引)を始めて3年目になる40代主婦のAさんは
昨年、高値圏の105円前半でドルを買った。ところが年明けからドル/円JPY=EBSは下落し
、その後も101─104円のレンジ相場が続いたため、ポジションは塩漬け状態に。
9月に入り105円後半まで上昇したところで、ようやく利益を確定させた。
一方、愛知県に住むFX歴6年の30代会社員、乙村亮さんは、年明けから春にかけて
円売りポジションを取ったものの、長く続いたレンジ相場の中で、思うように利益を出せなかった。
8月に入って円安方向の強いトレンドが発生し、102円後半から109円超えまでの間に
何度か利益確定と押し目買いを繰り返しながら取引した。「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の
運用資産構成見直しのニュースも話題となり、大きな資金が円安・株高トレンドを支えたおかげで、取引がしやすい環境になった」と振り返る。
今、Aさんはドル買いのタイミングを計っている。「(ドル買いポジションを)持ち続けていれば良かったが、
ここまで上がるとは正直思っていなかった。昨年の高値づかみの経験もあるので、
今は手が出せないが、一回落ちたところを確認して押し目買いしたい」と話す。
著名な個人投資家として知られ、為替に関するセミナーなども開く鏑木高明氏は、
ミセス・ワタナベのスタイルが変わってきたとみている。「今年の逆張り投資が失敗してきたことで、
押し目買いを待つ姿勢になっている」という。鏑木氏自身は長期投資を基本とするが、
セミナーに来る投資家は、足元のドル急上昇に付いて行けず、押し目を狙っている参加者が多いと話す
<潮目の変化は9月初旬>
これまでミセス・ワタナベは、相場が上昇すれば売り、下落すれば買い、という「逆張りスタンス」をとることが多かった。
ドル/円は今年1月に年初来高値105.45円をつけた後、半年以上も101─104円のレンジでもみあってきた。この間、ミセス・ワタナベはおおむね
「101円に近付けば買い、104円に近付けば売りというムードが強かった」(国内金融機関)という。
相場の上昇に逆らう傾向は、市場でドル高のシグナルが点灯してからも継続した。
8月末のジャクソンホール講演でイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長のハト派色が後退したと
解釈されドルが7カ月ぶりの高値をつけた後も、個人投資家はドル売りポジションを増やしていたと複数の市場筋は指摘する。
潮目が変わったのは9月初旬だ。1月に付けた年初来高値105.45円を明確に上抜けたことが、
大きな分岐点になった。日米金融政策の方向性の違いを意識した短期筋が
「急激にドル買い/円売りのポジションを膨らませた」(外資系証券)ほか、スコットランド独立をめぐる不透明感が、
ドル買いの流れを加速させた。そこでようやく個人投資家のスタンスに変化が出たという。
個人投資家の動向に詳しい外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は
「104円で売って踏み上げられ、105円で売っても踏み上げられた。106円台に入ってからはさすがに逆張り的なドル売りが減ってきた」と指摘する。
現在のスタンスは「様子見ムードの中、少しでも押し目があれば買おうというかたちになっている」という。
外為どっとコムの9月24日終了時点でのドル/円の取引残高は、ドル買い/円売りの比率が57.0%と、
9月2日の51.5%から上昇している。その間、ドル/円は104円前半から一時、109円半ばまで上昇。
逆張りスタイルなら、この比率は低下したはずだが、逆に増加しており、スタンスの変化をうかがわせる