
記念館の関係者が言う。
「売却に向けて動いていたのは ひばりプロダクションの加藤和也社長です。希望価格は14億円で、なぜか急いでいるとのことでした」
知られているように、加藤氏はひばりの実弟(加藤哲也)の長男で、7歳でひばりと養子縁組。弱冠17歳の時に 「ひばりプロダクション」の社長に就任している。1989年にひばりが亡くなると、10億3千万円余りを相続。まだ10代でありながら、一生お金に困ることはないと思われていたのだったが……。
年利15%の高利で
加藤氏が相続したひばりの遺産は、大きく分けてひばりプロダクション と不動産がある。ひばり プロダクションは、テレビやCMから入ってくる著作権、カラオケの歌唱印税、またメモリアルコンサートで得られる収入、ファンクラブ(約2200人)の会費などがある。信用調査機関によると、年商は1億数千万円。加藤氏の年収はかつて数千万円にのぼったと見られる。
一方、不動産では最も 大きなものが、現在のひばり記念館の土地建物だ。敷地面積が563平方メートルと、「御殿」と呼ばれただけあるが、不動産の登記簿謄本からは、意外な過去が見える。パチンコ機メーカーなどから、億単位の資金を借りてきたことが記されているのだ
とは加藤氏の知人である。
「最初の躓きは、08年のことでした。加藤さんは京都の嵐山にあった『美空ひばり記念館』の施設を買い取って、『京都嵐山ひばり座』としてリニューアルオープン させたのです。高級ホテルのような豪華な造りで、ひばりさんが映画に出演 した時の衣装や台本などが陳列されていました。これにつぎ込んだお金が約13億円です」
この年、加藤氏はパチンコ機メーカーの「京楽産業」から10億円を借りている。同社の関係者によると、パチンコ台にひばりの画像を使わせる契約を交わし、 〈美空ひばり不死鳥伝説〉などの著作権収入から返済してゆく契約だったという。ところが、肝心のひばり座は赤字を垂れ流し、13年に閉館に追い込まれてしまう