金持ちまでが消費を手控え、家庭用「金庫」の売り上げが伸びている!??景気の実態はいまどうなっているのか?
不安な数字 「個人的に外食の値段が高くなっていると感じます。私は週末の午前中、ファミレスで仕事をすることが多いのですが、例えば2年ほど前までランチセットが500~600円で食べられましたが、最近ではセットメニューを頼むと軽く1000円を超えます。これはかなりの衝撃です」 こう語るのは第一生命経済研究所の主席エコノミスト永濱利廣氏だ。「とはいえ、それで外食産業の客足が落ちて業績が落ち込んでいるわけではありません。日々の家庭での食事は切り詰めて、外食では思い切って支出するという消費のメリハリが進んでいるのです」(永濱氏) アベノミクスが始まって2年8ヵ月、株高、円安、消費増税と物価高などさまざまな変化が日本経済に訪れた。
政府や財界は株高や賃金、ボーナスの上昇など、その果実ばかりを強調するが、恩恵が国民全体に幅広く行きわたっているとは言い難い。果たして消費や景気の実態はどうなっているのだろうか。身近な統計数字で景気の動向を読み解いている三井住友アセットマネジメントの理事・チーフエコノミストの宅森昭吉氏は、「様々な社会現象を見る限り、景気は底堅い」と分析している。「例えば、大相撲の懸賞本数、中央競馬会の馬券の売り上げ、8月に行われた東北四大祭りの人出など、景気に連動しやすい数値を見る限り、非常に堅調です。また、完全失業率は今年5月の数字で3・31%。これは’97年4月以来の低い数字です」 統計上、アベノミクスが、景気回復に一定の効果をもたらしたのは確かなようだ。しかし、ここにきて不安な数字も出てきた。’15年4~6月の実質GDP成長率が前期比年率マイナス1・6%となったのだ。
前出の永濱氏が分析する。 「GDP成長率がマイナスになった要因の一つは輸出の鈍化ですが、これは明らかに中国経済の失速も影響しています。海外経済の不透明感は増しており、この部分が短期的に改善する保証はありません。 さらに気になるのは、家計の所得は増えているが、個人消費が弱いことです」
実質賃金の低下 安倍政権は賃金は上昇していると強調しているが、それがまやかしの賃上げであることは、名目賃金から消費者物価の影響をさしひいた実質賃金の推移をみれば一目瞭然だ。シグマ・キャピタルのチーフ・エコノミスト田代秀敏氏が語る。「実質賃金はアベノミクスが始まった’13年初頭からも下落を続け、その勢いはリーマンショックのあった’08年に迫ろうとしています。これでは消費が増えないのも当然です。なぜこれほど実質賃金が下がっているのか。1つは円安誘導による物価の上昇があるため。もう1つはグローバル化が進んだことで、日本企業は中国や東南アジアなど賃金の安い国とコスト競争をせざるをえず、人件費が抑えられていることが要因です」厚生労働省によると’10年度の実質賃金指数の平均を100とすると’15年6月の指数は93ポイントまで下がっている。物価上昇は直近でも続いている。エネルギー関連製品を除いて計算されるコアコア消費者物価指数は、今年6月に0・9%の上昇(前年同月比)。これは、消費税の影響を除いて計算するとこの2年間で最大の上昇幅である。 円安による物価高のペースに、給与の上昇は追いついておらず、庶民の暮らし向きは少しも上向きそうにない。