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中国経済の大減速が、世界に混乱をもたらしている=15日、北京市(ロイター)
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習国家主席は、中国経済の崩壊に打つ手がない(ロイター)
世界各国で金融・株式市場が大混乱している。中国経済の低迷や米国の利上げ、原油安などが大きな要因だが、日本も猛烈な「円高・株安」に見舞われている。旧正月「春節」の連休が明けて、習近平国家主席率いる中国はどんな対策を取るのか。
経済評論家の三橋貴明氏が、完全崩壊した中国経済の幻想と、過剰生産能力の解消につながる軍靴の響きに迫った。
日経平均が「暴落」と表現しても構わない、ありさまになっている。本稿執筆の12日、日経平均株価終値は約1年4カ月ぶりに1万5000円を割れた。昨年11月には、日経平均は2万円前後だった。
この株価急落は、何を意味しているのか。
もちろん、円高が進んだという話だ。何しろ、日本の株式市場における外国人投資家の「取引(保有ではない)」に占める割合は、2015年の実績値で71%(!)だ。株価とは、取引市場で決まる。
日本の株価を左右する外国人投資家は、円高になれば日本株を売る。外国人投資家は「外貨」でものを考えるため、円高になると日本株が「売り時」になってしまうのだ。
それでは、米国のFRB(米連邦準備制度理事会)が「利上げ」をしたにも関わらず、なぜ円高が進むのか。
実は、大本は「中国経済」なのである。昨年夏ごろまで、中国経済が「永遠に成長する」という幻想が世界的に共有されていた。結果、新興経済諸国、特に資源国で「資源の対中輸出に向けた設備投資」が拡大した。中国の輸入の4分の3は、資源だったのである。
ところが、大本の中国で株式、不動産、そして設備投資のバブルが崩壊してしまった。特に、設備投資のバブルは「過剰生産能力」という極めて深刻な問題を中国経済にもたらした。
中国共産党は、2月4日に鉄鋼産業における粗鋼生産能力を、今後5年間で1億~1・5億トン減らす政策を掲げるなど、過剰生産能力の解消に乗り出したが、遅すぎだ。
鉄鋼で言えば、中国の過剰生産能力は、何と日本の年間需要の4倍に達してしまっている。生産能力ではない。生産能力の「過剰分」だけで、日本の需要の4倍なのだ。これほどまでのデフレギャップを、いかにして解消すればいいのか。
中国経済が過剰生産能力問題で失速し、対中資源輸出に経済成長を依存していた新興経済諸国(ブラジル、ロシアなど)の成長に急ブレーキがかかった。
さらに、昨年12月にFRBが利上げを断行したため、中国を含む新興経済諸国からのキャピタルフライトが始まった。具体的には、現地通貨から外貨(ドル、日本円など)への両替が激増したのだ。
新興経済諸国の危機は、ドイツ銀行など中国投資にのめり込んでいたヨーロッパの銀行にも波及。ドイツ銀行のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は急上昇し、劣後債のデフォルト(債務不履行)確率が24・5%と、びっくりする水準に高まってしまった。
中国、新興経済諸国、そしてヨーロッパの危機は、ドル高と「それ以上の円高」をもたらした。日本株が売られ、「日本円」が日本国債に向かった。しかも、寄りにもよってこのタイミングで日本銀行がマイナス金利政策を採用したため、銀行も国債に殺到した。
結果、「国の借金で破綻する!」などと言われ続ける日本政府の国債価格が急騰し、ついに長期金利(10年物国債の利回り)までもがマイナス0・035%に突入してしまったのが、2月9日のことである。
さて、大本の中国問題に戻るが、中国経済が抱える過剰生産能力の問題は、もはや「普通の政策」のみでは解消は不可能な規模だ。
今後の中国共産党は、強引に生産能力の削減を図り(要は、リストラクチャリング)、同時に不足する需要を「外国」に求める形で、経済の立て直しを図ろうとするだろう。
ちなみに、過剰生産能力解消の「最も手っ取り早い手段」は、実は戦争である。
■三橋貴明(みつはし・たかあき) 1969年、熊本県生まれ。経済評論家、中小企業診断士。大学卒業後、外資系IT業界数社に勤務。現在は「経世論研究所」所長。
著書に『中国崩壊後の世界』 (小学館新書)、共著に『これからヤバイ世界経済』(ビジネス社)など多数。
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