[ロンドン 1日 ロイター] – ギリシャの支援交渉が難航する中、主要格付け会社の多くは、
ギリシャが期限までに国際通貨基金(IMF)や欧州中央銀行(ECB)への支払いができなくても、 同国の国債をデフォルト(債務不履行)に格下げすることはないとの見解を示している。
ギリシャは5月にIMFに約10億ユーロ、7━8月にかけてECBに約70億ユーロを支払う必要がある。
格付け会社大手4社のうち、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、フィッチ・レーティングス、 ドミニオン・ボンド・レーティング・サービシズ(DBRS)の3社は、ECB、IMFは通常の債権者とは異なるため、 期限までに返済義務を履行できなかった場合でも、デフォルトとは判断しないとの立場だ 。ただジャンク級(投機的等級)内でさらに格下げされる公算が大きいとしている。
S&Pでギリシャの格付けを担当するフランク・ギル氏は「何らかの理由でギリシャがIMF、ECBに対し返済できなくても、 これらは『公的』部門の債務であるため、当社の判断基準ではデフォルトには相当しない」と指摘している。
これは現在、ギリシャの生命線となっているギリシャ銀への緊急流動性支援(ELA)を維持する上で極めて重要だ。 ELAはECBの承認を受けた上で、ギリシャ中銀が実施しているが、ECBはデフォルトに陥った 国の国債を担保として受け入れることを認めていないためだ。
ムーディーズはIMFへの返済不履行ケースについては、他の3社と同様の見解だが、ECBについては異なる立場を示している。 ECBが保有するギリシャ国債は市場性証券である可能性があるため、他の市場性証券と同様の扱いになる可能性があり、デフォルトと判定するとしている。
格付け会社がデフォルトと判断しなくても、国際スワップデリバティブ協会(ISDA)がデフォルトと見なせば、 クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の支払いが発生し、他の債券にも「クロスデフォルト」が波及する可能性もある。 だが専門家によると、他の公的、民間セクターが保有するギリシャ国債にもデフォルトが波及するクロスデフォルトが発生するリスクは小さいようだ。 ギリシャがデフォルト判断を免れ、ELAを維持できたとしても、ECBはギリシャの銀行が担保として 差し出すギリシャ国債に適用するヘアカット(担保価値の削減率)を引き上げる可能性がある。そうなればギリシャの銀行への流動性供給は細る。
現在、ELAのギリシャ国債の担保に適用されているヘアカットは平均で35%程度。とりわけ償還までの期限が短いものなどはそれを下回る水準とみられている。