1: 謎の二枚貝 ★ 2018/07/24(火) 14:04:31.03 ID:CAP_USER
このところ、「物価が上がらないのはネット通販のせい?」という話が注目を集めている。この議論は、6月18日に日本銀行から公表されたレポートを機に盛り上がりをみせているが、足元の物価の弱い動きをめぐる議論とも連動するかたちで、引き続き話題となっていきそうだ。こうしたなか、7月30~31日に開催される金融政策決定会合(日本銀行)では、物価に関する集中点検がなされることとなっている。そこで、本稿ではこれまでの物価動向を振り返りつつ、この議論に関する簡単な論点整理を試みることとしたい。
本稿の主たるメッセージは、
(1)ネット通販の拡大による「アマゾン効果」が物価を下押しする要因となっているとしても、その影響は限定的なものにとどまる。物価全体の基調的な動きについては、物価動向を規定する基本的な要因を重視して、その推移を注視していくことが必要である。
(2)家電製品については、2012年以前の方が価格低下が際立っており、13年以降はむしろ下げ止まりの動きがみられる(ただし、以前ほどではないが16年以降はふたたび低下が生じている)。このことは、ネット通販が大きく拡大する前にも既存の家電量販店の間で激しい価格競争があったことを示唆するものだ。アマゾン効果だけを強調して、足元の物価の動きを説明することには慎重さが求められる。
(3)ネット通販の拡大がみられる衣料と文房具については、最近時点においてむしろ価格上昇がみられる。この点から、ネット通販の拡大による価格低下圧力以外の要因が、物価の動きに影響を与えている可能性が示唆される。
(4)ネット通販の拡大が物価に与える影響については、17年の年央以降に生じている宅配便の運賃(送料)値上げの影響を併せて考慮する必要がある。
というものだ。以下ではこれらの点について、順をおってみていくこととしよう。
1.物価動向における「アマゾン効果」
日本の家計消費支出に占める、インターネット経由の消費(ネットショッピング)の割合は3%程度にとどまっている。だが、利用金額は年々増加しており、その傾向は一段と勢いを増している。こうしたなか、6月18日に日本銀行から公表されたレポート(河田・平野[2018])では、インターネット通販の拡大が物価動向に与える影響について興味深い分析結果が示されている
(河田皓史・平野竜一郎「インターネット通販の拡大が物価に与える影響」『日銀レビュー』2018-J-5)。
ネット通販は、実店舗を持たないことによるコストの抑制などを通じて、実店舗を持つ既存の小売企業との競争において価格面での優位性を確保し得る。このようなネット通販の拡大は、競合する商品を販売している企業の価格設定行動に影響を与え、商品の販売価格を引き下げる方向への競争圧力を強めるものと予想される。
また、ネット通販の取扱量の拡大は、配送センターの新設などを通じた物流網の整備を通じて、輸送距離の短縮化による輸送コストの低減にも寄与することになる。この点においても、ネット通販のコスト面での優位性を高める方向に作用することになる。
図表1 消費者物価指数の推移(消費税調整済)
https://synodos.jp/economy/21850
続く)