11月以降、日経平均株価は2万3000円台に乗り、2万5000円の「大台」も見えてきたとの声も上がる。
また、世界の景気のベンチマークとなるNYダウ平均株価も、11月27日には史上最高値の2万8164ドルを記録。’20年11月に大統領選を控えるトランプ大統領は、株高維持のためあらゆる政策カードを切っている。
日本の景気も、五輪までは騙し騙し持ちこたえるかもしれない。だが日本は、株高に隠された、さまざまなリスクを抱え込んでいる。
「日銀の日本株保有額はいまや25兆円を超えています。また、政府はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)経由で20兆円もの株も抱え、これ以上買えない状態になっているはずです。
にもかかわらず、五輪までに株価を吊り上げるためか、政府は無理をして株を買い増していく可能性が高いです。その恩恵は外国人のハゲタカファンドがさらっていき、近いうちに市場は限界を迎えるでしょう」(経済アナリストの塚澤健二氏)
これまでの日本市場は、日銀やGPIFが買い支えることで株価が維持されてきた。だが、それが限界に達するということは、「安全弁」を失うことを意味する。もし次になにか起きれば、一発で破裂して株価は急落する。
政府の株の買い支えに加えて、上場企業の自社株買いも積極化している。その結果、本来の日本経済の状況をまったく反映しない、「見掛け倒し」の市場となっているのだ。
「現に、日本の基幹産業である製造業が、’19年4~9月期で3割も減益になっています。自動車、建設機械や産業用ロボットなどの製造業の業績は、あらゆる産業に波及します。
GDPに占める製造業比率は2割程度ですが、この業界の減益は、日本経済全体の衰退を示すとも見て取れます」(株式評論家の渡辺久芳氏)
政府の「大盤振る舞い」が、東京五輪まで続くのは間違いない。大会までに株価2万5000円の大台に到達し、期間中も株高は維持されるだろう。
ただ、大会後は厳しい。五輪自体が不況を吹き飛ばすほどの経済効果を持っているか疑問だ。
「リーマン・ショック級」もあり得る
実は、日本経済の衰退を示すデータが出はじめている。その一例が内閣府の「現状判断DI」だ。
景気の現状に関する街角の実感を反映したDIだが、’19年10月には前月から10ポイントダウンの36.7となった。「景気が悪くなった」と感じる人が急増しているのだ。
日本にとってさらなる懸念材料は、同じく株高に沸くアメリカである。
「最高値にあるNYダウ市場ですが、米国の今年7~9月期の企業業績は3%の減益に落ち込み、個人消費も市場予想を下回りました。
’20年11月の大統領選に向けて、アメリカは日本同様、政策的に株価が支えられている面があります。大統領選後、実体経済のマイナス要素が一気に噴き出してくると考えられます」(前出・渡辺氏)
実際のところ、米国の好況、不況を示すデータは入り乱れている。米国経済が「踊り場」に差し掛かっていることの表れだ。
近々、米国経済のマイナス要素が表面化する可能性は高い。そうなれば、’08年のリーマン・ショックの再来と言える世界的な株安が日本を襲う。強烈な円高も進み、ただでさえ苦境の製造業が壊滅的なダメージを受ける。
「五輪後にリーマン・ショック級の事象が起きた場合、’21年から’22年にかけて、日経平均株価は1万3000円、現在から4割以上価格を下げることになると見ています。景気回復の兆しが見られないまま、日本は’22年を迎えることになる」(前出・塚澤氏)
先述のとおり、日本の市場は日銀などが株を買いすぎて限界に達している。次に「リーマン級」の経済危機が訪れても、手の施しようがない。今度こそ日本は立ち直れない――。そんな悲観的なシナリオが浮かび上がる。
12/21(土) 7:01配信 現代ビジネス