◆「富裕税」導入の引き金引いた南米
富裕税の引き金を先に引いたのは南米の国々だ。 7日(現地時間)、ブルームバーグ通信によると、アルゼンチン上院は昨年12月保有資産2億ペソ(約2億4400万円)以上の高所得層を対象に、1回限りの富裕税を徴収する法案を最終的に通過させた。
法案が通過したことを受け、所得基準を充足する者は全財産の1~3%ほどにあたる税金を政府に納付しなければならない。 このうち海外保有資産には追加で50%以上の税金が課されるという。新型コロナでインフレーションが深刻化し、高所得層が海外に資産を移す現象が続いたためだ。
ボリビアやペルーなどでも富裕税の導入に対する議論が大きくなっている。 特にボリビアは、昨年11月に進歩党である社会主義運動(MAS)のルイス・アルセ候補が大統領として圧倒的な得票で当選して富裕税の導入が現実化している。 アルセ大統領の主な公約の一つが高所得層を対象とした富裕税の導入だった。
◆先進国でも富裕税議論が相次いで現実化
先進国も富裕税カードに手をかけている。ジョー・バイデン米国次期大統領は富裕税導入に反対する立場を取っているが、 民主党が執権しているカリフォルニアとワシントン州議会では高所得層を対象とした富裕税導入関連議論が始まったとブルームバーグが報じた。
フランスやドイツでも富裕税導入をめぐる議論に再び火が付いている。 過去に富裕税を導入した後で廃止した前例があるが、新型コロナの長期化によって富裕税関連の議論が再び始まった。
フランスは2013年進歩党のフランソワ・オランド大統領が富裕税を導入したが2年後に廃止した。 ドイツは1997年富裕税廃止後、2019年進歩党である社会民主党が富裕税の復活を唱えたが、アンゲラ・メルケル首相をはじめ政府与党が難色を示して失敗に終わった。
ブルームバーグは「推進派は欧州での過去の試みでは仕組みに欠陥があったとし、修正が可能だと主張する」とし 「例えば超富裕層に対象を絞り、金融の透明性および技術の向上を頼りに資産評価すれば課税はより容易になり得る」と伝えた。
◆「K字成長」と税収不足で再び水面上に
このように世界的に富裕税導入の議論が台頭している理由は、新型コロナ事態長期化にともなう世界経済の「K字形回復」ためだ。 K字形回復は部門・階層別に回復速度が両極化することをいう。新型コロナによって深化する貧富の差を解消する方案の一つで、富裕税というものだ。
各国政府の蔵も徐々に空になっていく状況も富裕税を悩む理由の一つだ。新型コロナで経済活動が萎縮し、各国政府の税収確保が非常事態に陥った状態だ。 弱り目にたたり目で、新型コロナ防疫措置や低所得層支援など各種政策のために費用まで大きくなっていて、資金源を探しに出なければならない状況に陥った。
新型コロナ拡大で3回の封鎖措置を取った英国が代表的だ。 ブルームバーグによると、英国政府は税収確保に困難を経験しており、第2次世界大戦以降、最も大きな財政赤字に直面した。 一部専門家は一部の富裕層を対象に1回限りの税金を課し、約2600億ポンド(約36兆5600億円)の税収確保を提案した。 資産50万ポンド以上を保有した者に5年間、財産の1%を税金で納付させる案だ。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のアンディ・サマーズ教授はブルームバーグに対して 「過去、富裕層対象の租税制度改革に関連する議論は全く進まなかったが、今や富裕税導入議論を重大なアジェンダとして扱っている」と話した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/ae3bce4a9d1f27a9428a2be6709d0200eb27cceb