1: 田杉山脈 ★ 2018/07/09(月) 17:43:43.70 ID:CAP_USER
人は無条件でお金をもらうと、仕事を怠け無駄遣いするのか―。国民の最低限の生活を保障するため政府がお金を一律に配る「ベーシックインカム」が有効かを調べようと、ケニアの農村で約2万人を対象に実験が行われている。答えは「無駄遣いしない」。日本でも導入の是非を巡り専門家らが議論してきたテーマだ。貧しくも堅実に暮らす村人たちを取材した。
緑が映えるトウモロコシ畑と周囲に点在する土壁の家、赤土の大地で遊ぶはだしの子どもたち。ケニア西部キスム郊外。約300人が住む電気と水道のない農村には、アフリカの典型的な光景が広がる。かつて多くの住民が1日1ドル(約110円)ほどで暮らしていた。
「ある日突然『お金をあげる』と言われ、大喜びしたよ」。ペンキ職人のピーター・キラさん(41)が笑顔で振り返った。米国の非政府組織(NGO)「ギブ・ダイレクトリー」が2016年10月から、村の大人全員に1人当たり月2250シリング(約2500円)を支給し始めた。8~19歳の子ども6人がいるキラ家は、妻と2人で月4500シリングを受け取る。使途は完全に自由だ。
それまで世帯の収入は月平均5千シリングほど。子どもの授業料すら払えず、親戚に借金をしていた。4500シリングは大金だが、キラさんは「ギャンブルや酒、たばこに浪費したことはない」と断言する。
使い道は9月に大学生になる長女メリセントさん(19)たちの授業料と、日々の食事の材料費だけ。朝5時に起きて夕方まで週7日働く生活は変わらない。「子どもの将来しか考えていない」と力説した。
取材当日は気温30度を超す猛暑日。昼下がりに村を歩くと、多くの住民が汗を流しながら、黙々と畑の草刈りや放牧にいそしんでいた。キラさんの他に道で出会った10人に聞いたところ、全員から「より良い生活のために貯金した」「学校の授業料や教材費に充てている」「農具や作物の種を買った。将来への投資だ」といった答えが返ってきた。
ギブ・ダイレクトリーは16年以降、ケニアで順次実験を始めた。現在は200近い村で実施し、約2万人に2~12年間、お金を渡す計画だ。広報担当のキャロライン・テティさんによると、定期的に聞き取り調査を実施。それまでギャンブルや過度の飲酒をしなかった人が、お金をもらうことで浪費するようになった事例はないという。
それどころか、テティさんは「今まで貧困から抜け出せずに自信を喪失し、現実逃避するためギャンブルや飲酒におぼれる人たちがいた。だが、彼らも最低限の生活が保障されて人生に希望が見え、まじめに働くようになった」と指摘。「『お金を無条件でもらったら働かなくなる』という考えは誤解だ」と話す。
ベーシックインカムは、生活に最低限必要な一定額を、就労や資産の有無にかかわらず個人に給付する制度。フィンランドが17年1月、国家レベルで初めて試験導入し、日本でも導入の是非を巡り専門家らが議論してきた。テティさんは「先進国と途上国で条件は異なるが、日本で導入しても同じ結果になるはずだ」と言う。
ベーシックインカムとは別に、途上国支援の在り方を巡り「難民など貧しい人に現金を渡しても、彼らのためにならない」との意見が、先進国の一部で根強い。だが、テティさんは「支援物資を支給するよりも、最低限のお金を渡す方が効果的だ」と主張する。
食べ物がほしい人や病院に行きたい人など、人によってニーズは異なり「何が必要かは当事者が一番よく知っている。国連やNGOが一方的に支援物資を支給するのではなく、お金を渡して自分たちで使い道を決めてもらう方が、彼らの尊厳にもつながる」と強調。「われわれの実験は、こうした議論の行方に一石を投じるだろう」と語った。 https://this.kiji.is/388876545529791585
緑が映えるトウモロコシ畑と周囲に点在する土壁の家、赤土の大地で遊ぶはだしの子どもたち。ケニア西部キスム郊外。約300人が住む電気と水道のない農村には、アフリカの典型的な光景が広がる。かつて多くの住民が1日1ドル(約110円)ほどで暮らしていた。
「ある日突然『お金をあげる』と言われ、大喜びしたよ」。ペンキ職人のピーター・キラさん(41)が笑顔で振り返った。米国の非政府組織(NGO)「ギブ・ダイレクトリー」が2016年10月から、村の大人全員に1人当たり月2250シリング(約2500円)を支給し始めた。8~19歳の子ども6人がいるキラ家は、妻と2人で月4500シリングを受け取る。使途は完全に自由だ。
それまで世帯の収入は月平均5千シリングほど。子どもの授業料すら払えず、親戚に借金をしていた。4500シリングは大金だが、キラさんは「ギャンブルや酒、たばこに浪費したことはない」と断言する。
使い道は9月に大学生になる長女メリセントさん(19)たちの授業料と、日々の食事の材料費だけ。朝5時に起きて夕方まで週7日働く生活は変わらない。「子どもの将来しか考えていない」と力説した。
取材当日は気温30度を超す猛暑日。昼下がりに村を歩くと、多くの住民が汗を流しながら、黙々と畑の草刈りや放牧にいそしんでいた。キラさんの他に道で出会った10人に聞いたところ、全員から「より良い生活のために貯金した」「学校の授業料や教材費に充てている」「農具や作物の種を買った。将来への投資だ」といった答えが返ってきた。
ギブ・ダイレクトリーは16年以降、ケニアで順次実験を始めた。現在は200近い村で実施し、約2万人に2~12年間、お金を渡す計画だ。広報担当のキャロライン・テティさんによると、定期的に聞き取り調査を実施。それまでギャンブルや過度の飲酒をしなかった人が、お金をもらうことで浪費するようになった事例はないという。
それどころか、テティさんは「今まで貧困から抜け出せずに自信を喪失し、現実逃避するためギャンブルや飲酒におぼれる人たちがいた。だが、彼らも最低限の生活が保障されて人生に希望が見え、まじめに働くようになった」と指摘。「『お金を無条件でもらったら働かなくなる』という考えは誤解だ」と話す。
ベーシックインカムは、生活に最低限必要な一定額を、就労や資産の有無にかかわらず個人に給付する制度。フィンランドが17年1月、国家レベルで初めて試験導入し、日本でも導入の是非を巡り専門家らが議論してきた。テティさんは「先進国と途上国で条件は異なるが、日本で導入しても同じ結果になるはずだ」と言う。
ベーシックインカムとは別に、途上国支援の在り方を巡り「難民など貧しい人に現金を渡しても、彼らのためにならない」との意見が、先進国の一部で根強い。だが、テティさんは「支援物資を支給するよりも、最低限のお金を渡す方が効果的だ」と主張する。
食べ物がほしい人や病院に行きたい人など、人によってニーズは異なり「何が必要かは当事者が一番よく知っている。国連やNGOが一方的に支援物資を支給するのではなく、お金を渡して自分たちで使い道を決めてもらう方が、彼らの尊厳にもつながる」と強調。「われわれの実験は、こうした議論の行方に一石を投じるだろう」と語った。 https://this.kiji.is/388876545529791585